うつわが巡る物語。Maison Tojiが生まれるまで
こんにちは、Maison Toji(メゾントウジ)オーナーの田路です。
新しい暮らしが始まり、キッチンに立つ時間が増え、ふと「これからの自分に合うものを選びたい」と思いはじめたあなたへ。
今日は、この武蔵小山の小さなうつわ屋がどうして生まれたのか、少しだけお話しさせてください。
丹波焼にイタリアンを。あの日見た「自由な食卓」
私の原点は、大学時代、宝塚のカフェでのアルバイト経験にあります。 そこでは、素朴で力強い風合いの「丹波焼」に、彩り豊かなイタリアンやフレンチを盛り付けて提供していました。伝統的な和食器に、瑞々しいパスタやソースが映えるメインディッシュ。一見意外な組み合わせですが、お客様から「この一皿、なんだかすごく素敵ね」と喜んでいただけたとき、確信したのです。
器は、ただの「入れ物」ではない。 料理を引き立て、食卓に心地よい調和(ハーモニー)を生み出し、座る人の心をふわりと解きほぐす力があるのだと。
同時に、ある寂しい現実も知りました。引っ越しや遺品整理の際、まだ十分に使える、そして誰かが大切にしてきたはずの美しい器たちが、行き場を失って大量に捨てられていく。「この美しい巡りを、止めたくない」。
その想いが、Maison Tojiの種となりました。
"Toji" という名前の由来
店名の「Toji」には、実は笑ってしまうような由来があります。 フルタイムで働きながら大学院(MBA)でビジネスモデルを発表したときのこと。人生の先輩方から「君の名前は『陶磁(とうじ)』と同じ響きなんだから、そのまま名乗っちゃえばいいじゃない」と、愛のある(?)おやじギャグをいただいたのです。
当時は自分名前を店名にすることに抵抗がありましたが、英語にはない響きで、日本らしくていいかも と思い、店名にしました。「いつか、陶磁器の代名詞のような存在になりたい」という大きな夢を、この名前に託しました。
そして「Maison」はフランス語で「家」を意味します。 友人の家に遊びに来たような、リラックスして器を選べる空間にしたいという願い。それからもう一つ。いつか芸術の街・パリへ進出し、日本の美しい器を世界へ届けたいという、私の密かな志もこの名前に込めています。
幸せを運ぶ「コウノトリ」が繋ぐもの
Maison Tojiには、大切にしているシンボルがあります。それは「コウノトリ」です。
私の故郷である兵庫県の県鳥であり、ヨーロッパでは「幸せを運ぶ鳥」として愛される存在。新しい命を運ぶコウノトリのように、誰かが大切にしてきた器を次の使い手へと運び、幸せの連鎖(Meguri)を作りたい。
かつて誰かの宝物だったヴィンテージの器と、今の作り手が魂を込めて生み出す現代の作家もの。そのどちらもが、コウノトリが運んできた贈り物のように、あなたの食卓で隣り合っている。そんな景色を目指しています。
ハードワークな日々、私を救ったのは「一杯のマグ」でした
「器にこだわる」というと、少し丁寧すぎて、自分にはまだ早いと感じるかもしれません。でも、実を言うと私自身、かつては仕事に追われ、心がささくれ立つような毎日を過ごしていました。
そんな時、ふと手に取ったお気に入りのマグカップ。 その絶妙な重み、土の柔らかな手触り、唇に触れる瞬間の優しさ。温かなコーヒーが喉を通るとき、強制的に気持ちが切り替わり、「ふぅ」と息をつけ、自分が凪の状態に戻っていくのを感じました。
忙しい現代を生きる私たちにとって、器を整えることは、生活のスピードを少しだけ緩めること。そして、「自分自身を大切に扱う」ことそのものなのだと実感しました。
「Ceramics Connect People(器が人を繋ぐ)」
コウノトリが運ぶものがたり。
あなたの新しい暮らしに、穏やかな光を添えてくれますように。